後遺障害9級とは?両側主要関節の可動域制限などの認定基準・慰謝料・異議申立て
交通事故の影響で、両方の手足や関節の動きが悪くなった場合、後遺障害9級に認定される可能性があります。
9級は片側ではなく「両側」に機能制限がある場合に該当することが多く、身体全体のバランスや日常生活に大きな支障をもたらします。
この記事では、9級の認定基準、可動域制限の目安、慰謝料・逸失利益の相場、異議申立ての方法までを弁護士が詳しく解説します。
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後遺障害9級が認定される代表的な症状
9級は、主要な関節が両側で可動域制限を起こしている、または複数部位に重い障害が残っている場合に該当します。
代表的な症状は以下の通りです。
- 両膝の関節拘縮により歩行が困難
- 両肘の可動域が半分以下に制限されている
- 両肩が上がらず、着替えや洗髪動作に支障がある
- 両手指に複数の関節拘縮が残り、細かい作業が困難
- 両足首の可動域制限により階段昇降が困難
これらは「左右対称の関節障害」または「複数部位の重複障害」であることがポイントです。
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可動域制限による9級の認定基準
9級は、両側の主要関節の可動域が「正常可動域の2分の1以下」になっている場合に認定されます。
測定はゴニオメーター(角度計)を用いて医師が行います。
| 部位 | 正常可動域 | 9級認定の目安(両側) |
|---|---|---|
| 肩関節 | 180° | 両肩が90°以下 |
| 肘関節 | 145° | 両肘が70°以下 |
| 膝関節 | 135° | 両膝が65°以下 |
| 股関節 | 125° | 両股が60°以下 |
左右どちらか一方のみの制限では10級となることが多く、両側で機能障害が確認される場合に9級が適用されます。
9級と10級・8級の違い
可動域制限に関する9級・10級・8級の違いを整理すると次の通りです。
| 等級 | 障害の範囲 | 代表例 | 労働能力喪失率 |
|---|---|---|---|
| 8級 | 一側の上肢または下肢に重度の障害 | 片腕・片脚に広範な拘縮や欠損 | 45% |
| 9級 | 両側の関節に可動域制限(半減) | 両膝・両肘などに拘縮 | 35% |
| 10級 | 一側の主要関節に可動域制限(半減) | 片肩・片膝などに拘縮 | 27% |
9級は「左右どちらも制限」がある点で10級よりも重く評価されます。
慰謝料と逸失利益の目安
後遺障害9級が認定された場合の慰謝料・賠償金の目安は以下の通りです。
| 基準 | 慰謝料額(目安) |
|---|---|
| 自賠責基準 | 約245万円 |
| 任意保険基準 | 約300〜450万円 |
| 弁護士基準 | 約690万円前後 |
労働能力喪失率は35%が目安です。仕事に直接支障が出る場合、逸失利益の金額が大きくなります。
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認定を受けるためのポイント
後遺障害9級を認めてもらうには、検査データと診断書の整合性が欠かせません。
特に以下の点を医師に明記してもらうことが重要です。
- 左右両側の可動域測定値(角度と単位を明確に)
- 事故前後の比較と改善見込み
- 症状固定の時期と通院履歴
- 日常生活・就労への具体的支障
また、リハビリ記録や動画を添付すると、審査側に動作制限の実態を伝えやすくなります。
※関連記事:後遺障害の診断書作成時の注意点
異議申立ての実務
初回で10級と判断された場合でも、追加資料の提出で9級へ引き上げられることがあります。
異議申立てでは、以下の書類を揃えるのが効果的です。
- 再検査による左右両側の可動域測定結果
- 主治医の追加意見書(事故との因果関係を明記)
- リハビリ経過記録や通院履歴
- 動画・写真など動作制限を示す資料
資料が充実していれば、再審査で9級が認められる可能性が高まります。
※関連記事:後遺障害の異議申立て方法
弁護士に依頼するメリット
後遺障害9級は、検査データの取り扱いや診断書の書き方によって等級が下がることが多い難易度の高い等級です。
弁護士に依頼すれば、医証の整理や異議申立てのサポートを専門的に受けられます。
- 検査データと診断書の整合性チェック
- 損害保険料率算出機構への提出書類作成
- 慰謝料・逸失利益の弁護士基準での交渉
- 異議申立て・訴訟の対応
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まとめ
後遺障害9級は、両側の主要関節に可動域制限が残る場合など、生活や仕事に重大な影響を与える等級です。
左右両方の測定データを揃え、日常生活への影響を具体的に記載した診断書を準備することが重要です。
大栄橋法律事務所では、可動域制限・関節障害を中心に、等級認定から異議申立てまでを一貫してサポートしています。







