後遺障害8級とは?上肢・下肢の可動域制限や欠損の認定基準・慰謝料・異議申立てを解説
交通事故によって腕や脚の動きが大きく制限されたり、関節が変形してしまった場合、「後遺障害8級」に該当する可能性があります。
8級は上肢または下肢に重度の機能障害が残る場合に適用される等級で、生活・就労の両面で重大な支障を伴います。
本記事では、8級の認定基準、該当する症状、慰謝料・逸失利益の目安、異議申立ての方法を弁護士が詳しく解説します。
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後遺障害8級が認定される代表的な症状
8級は、片側の上肢または下肢に著しい可動域制限や欠損が残る場合に認定されます。
単に動きづらいという程度ではなく、関節や骨格に構造的な損傷が生じていることが前提です。
- 片腕または片脚の主要関節が動かない、またはほとんど動かない
- 肩関節・肘関節・膝関節・股関節の可動域が著しく制限
- 骨折後に関節が変形し、関節強直(固着)状態
- 四肢の一部欠損(前腕・下腿の一部など)
- 神経麻痺による運動不能、筋萎縮が著しい場合
8級は「片側の重度障害」が中心ですが、他部位との併合でさらに上位等級になる場合もあります。
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可動域制限による8級の認定基準
可動域制限に基づく8級の認定は、主要関節の可動域が「4分の1以下」に低下した場合が基準です。
以下は代表的な測定基準です。
| 部位 | 正常可動域 | 8級該当目安 |
|---|---|---|
| 肩関節 | 180° | 45°以下 |
| 肘関節 | 145° | 35°以下 |
| 股関節 | 125° | 30°以下 |
| 膝関節 | 135° | 30°以下 |
関節が完全に動かない「関節強直」も8級に含まれます。計測は医師がゴニオメーターで行い、診断書に角度を明記します。
9級・10級との違い
8級・9級・10級の違いを比較すると、障害の重さと範囲の違いが明確です。
| 等級 | 障害範囲 | 代表的な症例 | 労働能力喪失率 |
|---|---|---|---|
| 8級 | 片側の上肢・下肢に重度の障害 | 片膝・片肘が強直、広範な欠損 | 45% |
| 9級 | 両側関節に可動域半減 | 両膝・両肘の拘縮 | 35% |
| 10級 | 片側主要関節に可動域半減 | 片肩・片膝の拘縮 | 27% |
8級は「動かない、もしくはごくわずかにしか動かない」レベルであり、実生活への影響は大きいです。
慰謝料と逸失利益の目安
後遺障害8級の慰謝料・賠償金の目安は以下の通りです。
| 基準 | 慰謝料額(目安) |
|---|---|
| 自賠責基準 | 約290万円 |
| 任意保険基準 | 約400〜550万円 |
| 弁護士基準 | 約830万円前後 |
労働能力喪失率は45%が目安です。特に肉体労働に従事している場合は収入減が大きく、逸失利益も高額になります。
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診断書作成時の注意点
8級では、診断書の内容が認定結果を大きく左右します。
医師に次の点を確実に記載してもらいましょう。
- 受傷部位と損傷内容(骨折・変形・神経麻痺など)
- 可動域角度(左右比較・単位を明確に)
- 筋力低下や麻痺の有無、筋萎縮の程度
- 症状固定時期と改善見込み
- 生活・就労への支障(具体例を含む)
検査画像(X線・CT・MRI)を添付し、可動域制限が客観的にわかる資料を揃えると効果的です。
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異議申立ての実務
初回申請で9級とされた場合でも、再検査や新たな医学的証拠により8級へ上がるケースがあります。
異議申立ての際は次の資料を準備します。
- 再検査による可動域の詳細データ
- 医師の追加意見書(事故との因果関係を明記)
- MRI・CTなど画像データの提出
- 動作制限の動画・リハビリ記録
弁護士が介入すれば、資料整理や論点の整理がより精密に行えます。
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弁護士に依頼するメリット
後遺障害8級は、認定基準が厳格で、医証の不備により等級が下がることが少なくありません。
弁護士に依頼することで、診断書内容の確認、医師への依頼文書作成、損害額算定などを一括で対応できます。
- 可動域測定データと診断書の整合確認
- 申請書・異議申立書の作成
- 慰謝料・逸失利益の弁護士基準での交渉
- 併合障害がある場合の補正計算対応
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まとめ
後遺障害8級は、片側の上肢や下肢に重度の可動域制限または欠損が残る場合に認定されます。
可動域データ、画像検査、診断書内容を一致させることが、正確な認定を受けるための鍵です。
大栄橋法律事務所では、医学的証拠の整理から異議申立て、保険会社との交渉までを包括的にサポートしています。







